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胃だけでなく脳の視床下部で分泌される「グレリン」というアミノ酸結合物には、摂食を促進する役割があるとする研究結果を、日本の宮崎県の研究グループが、1月11日発行の英科学誌『ネイチャー』(注1)に発表しました。
既に、一定程度摂食した後には脂肪細胞から分泌され血液中を流れて、脳の視床下部に「もう食べなくても良い」という、いわば食欲抑制の情報を伝える「レプチン」というホルモン物質があるということについて言及しました(注2)が、さらに逆に食欲増進の情報を伝えるホルモン物質である「グレリン」の発見も画期的な出来事であると言って良いでしょう。
これまで成長ホルモンの分泌制御は視床下部から出る成長ホルモン分泌促進ホルモンによって制御されることが知られていましたが、この研究はそれとは別に新しい制御系がある可能性を示したものです。
しかもこれは食欲の制御にも関わっており、研究グループは、このホルモンをラットの脳室内に投与すると摂食が促進されて体重が増加することを確認したそうです。そして逆にグレリンにくっつく抗グレリン抗体を投与すると摂食が強く阻害されることも発見しました。この効果は遺伝的に成長ホルモンを欠くラットでも見られたと云います。さらに詳しい分子レベルの解析からグレリンが脳内神経で摂食制御に深く関わっていることを証明しました。
そして最も興味深いのは、「レプチン」と共にこの度の「グレリン」の発見によって、拒食症や過食症、あるいは肥満症が、内的にしろ外的起因(引き金=トリガー)にしろ、ある種のホルモン変化・異常の結果であり、ホルモンを適切に調整すれば、それらの‘病気’も治癒される道が拓かれたということです。報道によると、なんと、すでに人間に応用する臨床実験に入っており、約5年後には新薬が大量生産され実用化される目処が立っているそうです。(注3)
ただし、薬による安易なホルモン調整によって、体に悪影響が出ないか十分に注意する必要があります。避妊ピルの利用に関して賛否両論がありますが、それ以上に安全性に問題があるでしょう。
過食症から自ら立ち直ったジェニーン・ロスは、過食症からの解放の有効なヒントを呈示しています。それは──
過食症からの第一歩は、空腹のときに食べるということです。
過食症の人々に限らず多くの場合、「栄養や満足感や、健康にかかわりなく食べています。空腹のときに食べるということは、身体の知恵を信頼するということです。身体が、自分の適性体重をよく知っていると信じることなのです」(注4)と彼女は述べています。
‘肥満恐怖’のあまり、安易に薬などで食欲(空腹感)を抑制することは、身体の正常な生理的反応を混乱させ、悲惨な摂食障害を引き起こすことにもなりかねません。生兵法は大怪我の元だということを十分に肝に銘じなければならないでしょう。(注5)
(注1)
M. Nakazato et al., Nature, 409, 194-198, 2001
(注2)
「Re:TV番組:肥満の科学」メルマガ2000.08.12号
「痩せるメカニズム──レプチン効果」
「肥満の内と外──パイの量」
「太るメカニズムとダイエットの基本──レプチン過多と適量化」
(注3)
食いしん坊の正体見つけた!? 食欲促す物質
宮崎の研究者ら英誌に発表『西日本新聞』2001.01.11
http://www.google.com/search?q=cache:www.
yokotomo.com/record/news/news010111.html+
%83O%83%8C%83%8A%83%93&hl=ja
文字化けする場合は、日本語(EUC-JP)に文字コードを
セットして下さい。
(注4)
ジェニーン・ロス『食べ過ぎることの意味──過食症からの解放』誠心書房、斎藤学監訳、佐藤美奈子訳、5頁。
(注5)
「痩せるなら、死んでもいい!?──危険な‘やせ薬’」
(:2001.3.29初出)
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| 睡眠と肥満 |
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米国のテレビABCのニュースで、睡眠と肥満の関係についてコロンビア大学の研究結果が報じられました。それによると──
「ある研究で睡眠こそ体重管理の重要な要素だと報告された。被験者の睡眠を2晩連続、4時間に制限したところ、10時間睡眠の時に比べて、食欲が24%増加し、糖分、塩分、でんぷんの多い食品を渇望した。血液検査で渇望の原因が判明した。すなわち、睡眠不足によって、食欲をコントロールするホルモン──レプチンとグレリンのバランスが崩れたことが原因だった。」
いずれにしても、睡眠不足だけでなく、ホルモンバランスの崩れが肥満の原因になるということは、一般的には言えるのだと思います。
(:2004.12.07初出)
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| がんに伴う食欲不振を改善する漢方薬 |
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六君子湯(りっくんしとう) |
→→→ |
グレリン(食欲促進ホルモン) |
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※フラボノイド含有 |
促進 |
↑抑制 |
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がん |
→→→ |
サイトカイン |
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刺激 |
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| ウィキペディア:六君子湯 |
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| 食欲・性欲・睡眠欲のハッピーバランス |
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睡眠時間が短いとレプチン(食欲抑制ホルモン)やグレリン(食欲促進ホルモン)のホルモンバランスが崩れて肥満になる傾向があるというコロンビア大の研究について紹介しました(注1)が、日本においてもサンプル調査が実施され、睡眠時間が5時間未満だと通常より1.4倍程中性脂肪が増加する傾向があることが最近実証されました。(注2)
ところで、生物である人間の三大欲求は、食欲・性欲・睡眠欲です。
個人的な経験からも、男性は食べた後に性欲が湧き、コトをなした後には眠気が襲って来るのに対して、女性はナニの前にはおしとやかだった人がコトが終るや猛烈に食欲が湧くのか、ガツガツと食べるという傾向があるように思います。
このことは生物学的にも説明がつきます。例えば交尾の後にオスを食べてしまうメスのカマキリの行動は、産卵のために栄養をつけなければならないという理由があるからです。
♂:→食欲→性欲→睡眠欲→
♀:→睡眠欲→性欲→食欲→
食欲・性欲・睡眠欲の男女のそれぞれのサイクル(上記)の不一致が“性格の不一致”になり男女が別離してしまうことがあるように、いずれかの欲求が満たされなかったり逆に過剰になったりするアンバランス状態だと、肉体的にも精神的にも健全ではありません。「よく食べ・よくして・よく眠る」こと、このバランスを取ることは人間の幸福の基本であると言ってよいでしょう。
(注1)
「睡眠と肥満」
(注2) 睡眠時間が短いと肥満をはじめ高血糖、高脂血症などになりやすいことが日本大学医学部の研究で明らかになった。
2万人以上の健診データ(1999年、2006年)などをもとに解析したもので、それによると睡眠5時間未満という生活を続けた人は、5時間以上の人に比べて肥満のリスクが1・36倍と高い。
同大の兼板佳孝講師は、「とくに男性においては、短い睡眠時間が肥満を発症する危険因子となることがわかった。その逆として肥満が睡眠時間の短縮にもかかわっているようだ」と話す。睡眠不足と肥満は互いに影響し合うことから悪循環を招きやすく、要注意だ。
また肥満以上に睡眠時間に影響を受けるのが血糖値。空腹時血糖値は睡眠6時間未満だと3・6倍と非常に高い。ちなみに値が最も低かったのは6時間以上7時間未満だった。さらに7年前のデータと比較し、高血糖がなかった人が新たに高血糖になった人の睡眠時間は、5時間以上を保持していた人を1とすると、5時間未満の人で1・27倍と、睡眠不足を続けているとやがて病気になることも。高脂血症の指標である高トリグリセライド血症も、5時間以上→5時間未満へ減少した群が5時間以上を保持した人の1・42倍だった。
兼板講師は、「睡眠は短くても長くてもダメ。肥満、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病に影響を与え、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中といった病気の引き金になる可能性があるため、今後は睡眠も保健指導などの指針に含めるべきだ。これから睡眠も食事、運動、飲酒、喫煙に次ぐ、第5の生活習慣として着目する必要がある」と指摘。
メタボ対策にはまず睡眠。忙しくても何とか6時間は確保したいものだ。
(夕刊フジ:2008/3/12)
(:2008.3.17初出)
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| 普通預金型脂肪 |
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「太る」ということは、単に体重が増加するということではありません。例えば現役時代の千代の富士(現九重親方)は身長180cm、体重120kgでしたが、決して太っているわけではありませんでした。というのも体脂肪率がたったの15%しかなかったからです。
その分、筋肉がついて体重があれだけあったわけです。
要するに「肥満」しているかどうかは、いわゆる体脂肪率(脂肪の重さ÷体重)の度合によって決定されるのです。
普通、日本人の成人男性の脂肪率の標準値は15〜20%であり、女性の場合は20〜25%であると言われています。それ以上であれば「肥満」していると言われるわけです。
既述したように、いわゆる「体脂肪」には(1)「内臓脂肪 」と(2)「皮下脂肪」があります。(1)は内臓の周囲につく脂肪であり、(2)は特にお腹の周囲や太腿、お尻などの皮膚と筋肉の間につく脂肪です。
一般に(1)は男性につきやすく、(2)は女性につきやすい脂肪です。体型は(1)の場合特に上半身が肥満するリンゴ型になりやすく、(2)は主に下半身が肥満する洋ナシ型になる傾向があります。
ところで(1)の脂肪は、たとえばお金の出し入れが容易な‘普通預金’のように、増減の変化が比較的大きい脂肪であり、それに対して(2)は‘定期預金’のように増減が緩慢な脂肪であると言われています。
内臓脂肪の過剰は特に健康に良くないのですが、しかし適切な運動をしてエネルギーを消費すれば,皮下脂肪よりも比較的容易に減らすことができる脂肪であるわけです。
だからと言って「ガチンコ・ダイエット学院レディース」のように、100kmマラソンをやったからと言って7kgも一気に体重が減少するなどというインチキを信用してはいけません。(注)実は脂肪1kgを減らすには、なんとフルマラソン3回以上のエネルギー消費が必要だそうです。
(注)
「本当かい、ガチンコ?」メルマガ2000.8.16号
(:2000.11.11初出)
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