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‘デブス’=‘デブ’+‘ブス’や‘デブサイク’=‘デブ’+‘ブサイク’という言葉が造語され、ネット上でよく使われています。この場合は、‘ブス’や‘ブサイク’が‘デブ’とイコール関係で結ばれていることが多いのですが、最近、跋扈(ばっこ)しているのが、次のような理屈です。
どちらも醜いけれど、‘ブス’は、生まれつきのもので、努力してもしょうがないのに対して、‘デブ’は、努力しない分、‘ブス’よりも人間的に劣るという、‘ブス>デブの論理’です。
日本テレビの「ビューティ7」というエステサロンを舞台にしたドラマでも、エステの従業員(神田うの)に次のように言わせています。
「デブはブスより最悪よ!ブスは生まれつきだから仕方ないけど、デブは怠慢の証でしょう。」(注1)
しかしこのような‘ブス>デブの論理’は二重の意味で間違っていると言えるでしょう。
まず‘ブス’という美的価値判断は、各時代・各社会そしてまた各個人によって相対的であり、生まれつき絶対的に決まっているものではない主観的で恣意的な言葉であるということ、化粧やファッションの工夫や、心の持ち様によって現れる表情など次第で外見がどう見えるかはケースバイケースで変わり得るということ。
また‘デブ’という言葉は、肥満者に対する蔑称(注2)です。すなわち、「肥満」とは──
例えば、外見に表れない内臓脂肪過多の‘隠れ肥満’があるように、必ずしも外見だけで判断できるものではなく、厳密には体脂肪率を基準にした意味で「痩身」と区別するための数値化できる客観的な概念です。
区分けの基準として便宜上‘標準体重’という用語て使用されている意味での‘標準’という概念はあるものの、‘肥満/痩身’と二項対立され区分されるような概念ではなく、この2つの概念の間には数量的な連続性があります。
それに対して、「でぶ(デブ)」とは──
いわゆる‘りんご型’にしろ、‘’洋ナシ型’にしろ、いわば外見的な「プランパー体型」を主観的に差別・侮蔑する際に使われる言葉です。(注2)
肥満の原因にはいろいろあるにしても、現在、科学的な学術研究(注3)で明らかになっているのは、7割がたが遺伝的なのであり、そのような太りやすく痩せにくい体質の人々が、努力を惜しむ怠惰な人間として劣等視されるのは謂れのない差別だということ。
要するに、‘ブス’や‘デブ’という言葉は、現代の日本に蔓延している社会的偏見、すなわち‘痩せれば痩せる程、美しい’という偏見や、‘肥満しているのは、怠惰の結果だ’という先入観が強く反映した蔑称であり、そのように他者を差別することでしか、自己同定化(アイデンティファイ)がはかれない悲しき人間によって使用されるものでしかありません。(注4)
肥満者を見て、あたかも生理的な反応を示して、「デブはうざい」とか暴言を吐き、嫌悪感を露にする人間の心理や行動様式は、‘いじめ’を行う人間の心理や行動様式と共通す性質があります。このことは、生理現象である「アレルギー反応」に喩えることで説明がつきます。例えば、卵とその卵を食べるとジンマシンが出てしまう人がいる場合に、どちらに問題があるのでしょうか?卵に過剰反応しアレルギーを起こしてしまう人間の方にこそ免疫系に病的疾患があり問題があるのは言うまでもありません。
従って、非難されるべきは、臆面もなく無自覚にこのような言葉を発する差別する側なのであり、彼らこそその差別意識を改める必要があります。そして、‘ブス’や‘デブ’と蔑視されている被差別者こそ、いろいろな意味で社会的被害者であるのだということが一般的に認識されるべきなのです。
(注1)
キューティ7、第5話 2001.8.1放送。
因みに、女優の山咲千里さんはその著書において、「ダイエットはまず心の贅肉から落とそうよ!」と提案し、「痩せていることはエラクない。すごいのはスリムに見せるヒトだ」と主張し、化粧や服装などのおしゃれや食事に気を配り、日々自己管理を怠らない努力をしているからこそ、『だから私は太らない』と誇らしげに語っています。
(注2)
「体型の3類型:スレンダー・グラマー・プランパー」
(注3)
蒲原聖可『肥満とダイエットの遺伝学──遺伝子が決める食欲と体質』(朝日新書)
蒲原氏のその他の著作
『肥満遺伝子──肥満のナゾが解けた!』講談社ブルーバックス
『ヒトはなぜ肥満になるのか』岩波科学ライブラリー
『図解雑学 なぜ太るのかやせるのか』ナツメ社図解雑学シリーズ
(注4)
「ギャップという強迫観念──減量主義ダイエット」
(2001.8.8初出に加筆)
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| ムカつく女ども!? |
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「ムカつく女どもに説教オヤジ怒り爆発!!不潔水虫&ゴミ女vsメル友(秘)援助交際」
先日の『たけしのTVタックル』(注1)の番組紹介はこのようなものでしたが、その‘ムカつく女ども’の中には太った女性も入っていていました。スタジオには、太った女性の代表として、あのカワイ麻弓さん(注2)と、それに伊藤雅美さんが出席していました。
伊藤雅美さんは、あの日本テレビの『ビューティ7』(注3)のエステサロンの太った3人の顧客の内、他の2人が‘脂肪太り’、‘むくみ太り’と診断されていたのに対して、‘筋肉太り’と言われていた役を演じていた女優さんです。他の2人が肥満しているために、結婚できなかったり、旦那さんに浮気されたりしていたのに対して、彼女の役は肥満しているために就職できないという、まさに社会的不公平の被害を蒙っている役でした。
それにしても彼女の芸達者ぶりには感心して見ておりました。彼女は、カリカチュア(戯画)化された‘デブ’の役を見事に演じて、このような表情や仕草をすれば、大衆が抱くステレオタイプ(固定観念)な‘デブ’のイメージをドンピシャと再現し、笑いを取ることができることを実に的確に把握した演技をしていたと思います。
さらに、『たけしのTVタックル』で、明るく大らかに微笑みを絶やすことなく自分の考えに自信を持って発言していた彼女の堂々とした態度を見て、僕はすっかり彼女のファンになってしまいました。
さて、『TVタックル』では、「太った女性に物申す」として、テレビ朝日のニュースステーションでお天気お姉さんをやっていたタレントの乾貴美子さん(注4)に意見を言わせていました。以下、その時の議論の採録です。
* * * *
乾貴美子:夏を迎える前に痩せようとは思わなかったんですか?
伊藤雅美:エ!?何で痩せなきゃいけないんですか?
乾:今年の夏は異常気象ですごく暑いんですよ。そんな中、あなたたちが町にいると、余計暑苦しいんですよ!!
伊藤:ちょっと待って!さっきお友達、すごい多いって言いましたよね。今の発言で8割は友達、減りましたよ。
石原里紗(注5):顔、形とかそういうのとは別にして、体重とかはコントロールできるわけでしょう。私もまだ太ってますけど、今より10キロ太ってて、ダイエットして、今でも継続中なんですね。で、体重というのは自分でコントロールできるものだから、もともとある体の特徴と一緒にとらえるのはおかしいと思うのよ。
(同席者の発言:なぜ、他人が言うの?)
伊藤:太っているのがイヤだったら、痩せてますよ、トットと。
石原:見た目で選ぶのは良くないみたいなことは言ったけど、太っているのは性格の一部みたいなものでしょう。
(同席者の発言:なぜ他人が直せって言うの?)
伊藤:さっき、太っている人は町へ出るなとまで言ったんですよ、彼女。
乾:心配なんだもん、見てるとさ。暑くて苦しいんじゃないかとかさ、お腹すいてるんじゃないかとかさ、気をもむのよ、それがイヤなの!!
石原:太る理由というのは、私の知り合いの内科のお医者さんが言ってたんだけれど、消費しているエネルギーより摂っているカロリーの方が多いからという理由しかないわけよ。(注6)
キッチュ(男性タレント):生まれつき太りやすい体質ってのはあるよ。
石原:私が言いたいのは、太るのがいかんというのではなくて、もともとある特徴と同じにして開き直るのはおかしいと言っているわけ。顔が不細工だからイヤだというのと、デブだからイヤだというのは別!不細工というのは生まれながらにして不細工なわけでしょう、整形しない限り…。
大竹まこと(男性タレント):なぜ、男サイドから見たような物の言い方をするんだよ!?なんで女同士で女を弾劾するんだよ!?男が言うならわかるけど…
(同席者発言:同性同士だからこそ、弾劾したくなるんだよ、自分の位置を見てるから弾劾したくなるんだよ。)
石原:何でもいいけど、デブと不細工とを一緒にしないでほしい!(注7)
乾:太ってて、開き直ってて…
(同席者発言:開き直りじゃない、自分を認めてるの!)
伊藤:そう、私はこんな自分が好きなの!!
乾:どこが好きなの??
(同席者発言:発見したんだよ、彼女は!乾さんが自分の魅力を発見したのと同じに彼女たちも発見したん7だよ)
伊藤:話を聞いてると、例えば不潔なのが他人に迷惑を及ぼすとか、そういうのはわかりますよ。だけど、うちらが太っいることで何を一体迷惑をかけましたか!?
乾:見・苦・し・い!!
(同席者発言:なんで見苦しいと心配するの!?)
桂ざこば(落語家):一ぺんはダイエットしたことあるんやろ、ほんまのこと言って?
伊藤:ありますよ。
桂ざこば:そのダイエットする苦しみよりも、今の方が楽やいうことでしょう!?
伊藤:私、一番痩せていた時、ちょっと前まで25kg位痩せてたんですよ。
乾:できるんじゃないですかー!
伊藤:できるんだけど、維持することもできたんだけど、よく考えたら、私、こっちの方が自分に合っていると思って、今みたいに、戻した!これが私の生きざま!
カワイ麻弓:悪いけどね、私、あなたより運動神経、いいよ。
伊藤:私も絶対、身軽だと思う。
乾:そりゃ、どっちでも良いけど…
伊藤:それと紹介されたVTRでおかしいと思ったことが1点あって、電車の中でピンヒールで足を踏まれて、足の骨が折れたって言いましたよね。でもデブはピンヒール履いたら、靴のカカトが折れます!
乾:気をつけてください、それは…知りません、そんなこと…
司会:「ムカつく女第二弾」ということでやって来ましたが、どうですか、たけしさん?
ビートたけし:エ!?そんかこと言われてもな〜。少し残酷なことを言わせてもらうならば、1億8千万円のマンションを現金で買う奴がいるグループと、2千万円のマンションの35年のローンをくんだグループがあって、それが同時進行してるわけだよ。どっちが良い悪いは言わないけれど、それを文句を言って1つのグループにまとめようとか、痩せたグループが太ったグループを止めろとかではなく、2つのグループが同士進行するから、どっちが良い悪いではなくなって来てるな…
* * * *
さて、乾貴美子さんの応援サイト(注8)の掲示板にも次のような投稿が載っていました。
* * * *
TVタックル見ました(8月6日の)
◆投稿者:えへ☆ ◆投稿日時:2001年08月06日(月)22時03分56秒
TVタックル見ました。太っている人に対して、あの言い方はひどすぎるんじゃないですか?私は、最低だと思います。
8月6日のTVタックルを拝見して...
◆投稿者:至恩 ◆投稿日時:2001年08月0
7日(火)01時33分17秒
えへ☆さんの、仰る意見に同感です。8月6日オンエアのTVタックルで、太った2女性の名札の番号を名指しで、「暑苦しい」と仰った乾さん。それ、あまりにもひどすぎる毒舌じゃないですかね。思わず唖然としてしまった私です。「あんた、何様なの?」って感じです。だって、そういう乾さんだって、太っていないけど決して目元涼しい美人とは言えないじゃないですか。言われた本人が「これでファンは8割減ると思う。」と仰っておりましたが、その通りです。ハイ。
* * * *
確かに、このようなまっとうな見識がちゃんと出てくれば安心なのですが、しかし例えばネットを検索して見れば、‘デブは見苦しい、暑苦しい、ムカつく’という口汚い発言が数多く垂れ流されているのも事実です。このような発言が平気で公然と発せられる現象は、実は現代日本に蔓延する一種の‘社会病理’を示していると言えるのです。(注9)
(注1)
「たけしのTVタックル」2001.8.6(月)テレビ朝日
(注2)
「ビューティ7」5話6話
(注3)
「ビックレディースクラブ」
(注4)
彼女は現在(2003.3)、テレビ東京系の「解決!クスリになるテレビ」で「健康レポーター」としてレギュラー出演しています。
(注5)
番組中で表示されたキャプション「石原里紗(フリーライター):専業主婦の実態を描いた『ふざけんな専業主婦』の中で‘専業主婦は家畜’と発言。各界から大反響を受ける。」
因みに、例えば、彼女の言動を糾弾するホームページ
http://member.nifty.ne.jp/thinkingFL10/index.html
(注6)
「カロリー一元論の落し穴」参照。
(注7)
このような意見に対する批判は、「ブス>デブの論理」参照。
(注8)
「頑張れ、乾貴美子さん!」
(注9)
「ブス>デブの論理」(注5)参照。
(2001.8.9初出)
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モリクミ(森公美子)さんは、結婚前に、「私が結婚したら、デヴィ夫人ならぬ、デブ夫人ね」と冗談を言っていましたが、デヴィ夫人本人は、肥満者に無理解なために固定観念に凝り固まった、とんでもなく無教養な差別主義者です。
さて、彼女が出演したテレビ朝日の番組「そんなに私が悪いのか!?」の「ダイエット」をテーマにした回の放送(注1)に対して、僕は、トピアの会の携帯用のメールマガジンで次のような見解を表明しました。この見解はわが「肥満論」の骨子でもあります。
「肥満の原因は約7割が生来の遺伝であるのが定説!ところがその肥満者を自己管理のできない怠け者だ云々と馬鹿にするのは、黒人を肌が黒いと蔑視するのと同様に社会的差別!確かに不健康な肥満は改善しなければならないが、それ以外で肥満者が不利益を蒙るのは概して社会的差別が存在するから!つまり太っていること自体が悪いのではなく、太っていることを醜いと感じ蔑視する社会的価値観こそが問題なのだ!この社会的偏見があるから逆に健康を害してまでも痩せることに血眼になる馬鹿な女性が増加し、まんまとエステを太らせている!」(注2)
この意見表明に応じて、ある女性から、あの番組に関する次のような投稿がありました。
「一昨日の番組(テレ朝:そんなに私が悪いのか!?)は肥満がテーマで、デビ夫人が(太ってる人に対して)『あなた方はバカの様に食べ、美醜の違いも理解できない〜』とちょっと忘れちゃったけどボロクソに言ってた。痩せていてもあの人の様に人に対して礼儀や思いやりや常識がない人もいる。あんな人にはなりたくはない。最低だと思った。」(注3)
これらの意見に同意しつつ、さらに文化論をからめたご意見が、ある男性より寄せられました。
「僕も一昨日の『肥満論』や昨日の女性の方のご意見に賛成です。太ってない女の子の話も聞いてると、いかに周囲の無神経な言葉が全ての女性を追い詰めているかがよくわかります。ある20才のコは顔は美人だしナイスバディでモデルやっててもおかしくない様な体つきなのに、彼氏に『お前デブだなぁ(二の腕とかお腹がほんの気持ち程度プニプニ気味なのを指して言ってるらしい)』て言われたのを気にしてダイエットしてました。日本人はほめるのがヘタでけなすのが愛情表現という、欧米との文化の違いも大きな原因の一つかもしれません。」(注4)
これらの意見に対して、海外在住のある男性から次のようなご意見が寄せられました。
「デビ夫人はたぶんテレビ向けに少し誇張して言っていたのだと思いますが(おもしろくするために)、ぽっちゃりの人が好き・嫌いに限らず、人として言ってはならないことがあると思います。番組は見ていませんが、見なくて良かったです。」(注5)
このご意見に対して、実際に番組を見ていた立場から、僕は次のようにコメントを付けさせて頂きました。
「見ていなかったから判らなかったと思いますが、彼女は痩身=善/肥満=悪という短絡的な二元論が真実だと思い込み強弁していました。この間違った考えが社会的にはびこり人権侵害が日常的に行われているのが問題なわけです!」(注6)
(注1)
「そんなに私が悪いのか!?」ホームページ
番組バックナンバー2001.7.2放送「ダイエット」
この番組のHPには、「5人で合計90キロやせた家族。20キロのダイエットに成功し10歳は若返った美人妻」と記していますが、その‘美人妻’と呼ばれている女性は、‘痩せれば美しい’という強迫観念・憶見(ドクサ)に囚われていない僕の美的価値判断からすると、痩せる前の‘ふくよかな’感じから、全く‘やつれた’感じに変身したという印象しか持ちませんでした。
(注2)
2001.07.03配信
(注3)
2001.07.04配信
(注4)
2001.07.05配信
(注5)(注6)
2001.07.06配信
(2001.8.12初出)
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